FXのロスカットとは、損失が一定の水準に達したときに、FX会社が自動的に取引を決済して終了させる仕組みです。当記事では、ロスカットの仕組み、証拠金維持率の計算方法、FX会社ごとのロスカット水準を中心に解説します。あわせて、ロスカットでも損失が限定されない場合と、ロスカットを避ける方法も整理します。
「ロスカットされた」という声を聞いて、FXを始めるのが怖くなった方もいるでしょう。ロスカットは本来、損失がふくらみすぎないように守るための仕組みです。どの水準で発動し、どんなときに守りきれないのかを知っておけば、備え方も見えてきます。
FXのロスカットとは?損失の拡大を防ぐ自動決済の仕組み
ロスカットは損失が一定の水準に達すると自動で取引を終える仕組み
金融先物取引業協会は、ロスカットを「損失が一定の水準に達した時に自動的に取引を終了させて、証拠金以上の損失発生を防ぐ仕組み」と説明しています。相場が予想と反対に動いて含み損がふくらんだとき、FX会社が保有中の取引(ポジション)を強制的に決済します。
ロスカットされると、それまでの含み損はその時点で確定した損失になります。一方で、そのまま損失が広がり続けることは防げるため、口座のお金をすべて失う前に取引を止める「安全装置」の役割を持っています。
個人のFXではロスカットが法令で義務付けられている
金融先物取引業協会によると、2009年の内閣府令の改正で、個人を相手にするFX取引ではロスカット・ルールの整備と遵守が義務付けられました。それまでは業者の任意で、ルールがあっても十分に機能しなかった事例があったためです。
金融庁も、FX会社は投資者の損失の拡大を防ぐためのロスカットルールを定め、評価損があらかじめ取り決めた水準に達した場合は建玉を強制的に決済すると説明しています。ロスカットを実行する水準などは、各社の契約締結前交付書面等に記載されています(金融先物取引業協会)。
出典:ロスカット・ルールの整備・遵守の義務付け(金融先物取引業協会)/いわゆる外国為替証拠金取引について(金融庁)
ロスカットと追証(追加証拠金)の違い
ロスカットと似た言葉に「追証(追加証拠金)」があります。ロスカットは取引時間中に水準を下回ると自動で決済される仕組み、追証は決まった時刻に証拠金が足りないと追加の入金を求められる仕組みです。
追証の制度があるかどうかはFX会社によって違います。追証の詳しい仕組みはFXの追証とはで解説しています。
証拠金維持率の計算方法|ロスカットの判定に使う数字
多くのFX会社は、「証拠金維持率」という数字でロスカットを判定しています。ここでは計算方法と、ロスカットになるレートの目安の出し方を解説します。
証拠金維持率=有効証拠金÷必要証拠金×100
証拠金維持率は、口座に残っているお金(有効証拠金)が、取引に必要な証拠金の何%あるかを表す数字です。基本の計算式は次のとおりです。
- 有効証拠金=預けた証拠金±評価損益
- 必要証拠金=為替レート×取引数量×4%(個人・レバレッジ25倍の場合)
- 証拠金維持率(%)=有効証拠金÷必要証拠金×100
細かい式はFX会社ごとに違います。たとえばみんなのFXは「純資産÷必要証拠金×100」、DMM FXは「(純資産額-注文証拠金)÷ポジション必要証拠金×100」と定めています(2026年10月時点・公式サイトより)。含み損が増えると有効証拠金が減り、証拠金維持率が下がっていく点は共通です。
計算例:10万円を預けて米ドル/円を1万通貨買った場合
1米ドル150円で1万通貨を買うと、必要証拠金は150万円×4%=6万円です。10万円を預けていれば、取引直後の証拠金維持率は10万円÷6万円×100=約167%になります。円高が進んだ場合の変化は次のとおりです。
| 米ドル/円 | 評価損益 | 有効証拠金 | 証拠金維持率 |
|---|---|---|---|
| 150円(買った直後) | 0円 | 10万円 | 約167% |
| 148円 | −2万円 | 8万円 | 約133% |
| 146円 | −4万円 | 6万円 | 100% |
| 143円 | −7万円 | 3万円 | 50% |
※前提:米ドル/円=1ドル150円の仮のレート、ほかに取引なし。説明を簡単にするため必要証拠金は6万円のまま計算しています(実際はレートの変動で必要証拠金も変わります)。スプレッド・スワップポイントは含めていません。
ロスカット水準が100%の会社なら146円前後、50%の会社なら143円前後でロスカットされる計算です。同じ取引でも、FX会社の水準によってロスカットまでの余裕が変わることが分かります。
ロスカットになるレートの目安の出し方
ロスカットまでの値幅は、(有効証拠金−必要証拠金×ロスカット水準)÷取引数量でおおよそ計算できます。上の例で水準100%なら(10万円−6万円)÷1万通貨=4円、水準50%なら(10万円−3万円)÷1万通貨=7円です。
預ける金額を30万円に増やすと、水準100%でも(30万円−6万円)÷1万通貨=24円まで耐えられる計算になります。証拠金に余裕があるほど、ロスカットまでの値幅は広がります(仮の数字による計算例です)。
FX会社ごとのロスカット水準(2026年10月時点)
ロスカットの水準はFX会社ごとに決められています。主なFX会社の個人口座の水準をまとめました。
主なFX会社のロスカット水準一覧
| FX会社(サービス) | ロスカット水準(個人) |
|---|---|
| DMM FX | 証拠金維持率50%以下 |
| GMOクリック証券(FXネオ) | 証拠金維持率50%を下回った場合 |
| SBI FXTRADE | 証拠金維持率50%を下回った場合 |
| 松井証券のFX | 50%・60%・70%・80%・90%から選択 |
| 楽天FX | スタンダード25倍コースは50〜95%(5%刻みで設定。口座開設時は50%) |
| 外為どっとコム(外貨ネクストネオ) | 有効比率100%〜50%(10%刻みで設定。初期設定は100%。取引時間終了前の1時間は設定にかかわらず100%) |
| 外為オンライン | L25Rコースは100%、L25コースは20%(L25コースは毎朝の証拠金判定で取引証拠金を下回ると全決済) |
| みんなのFX | 証拠金維持率100%以下 |
| LIGHT FX | 証拠金維持率100%以下 |
| ヒロセ通商(LION FX) | 有効比率100%未満 |
※2026年10月13日時点・各社公式サイトより。会社によって「証拠金維持率」「有効比率」など呼び方や計算式が異なります。法人口座の水準は除いています。
出典の例:DMM FX サービス概要/みんなのFX サービス概要/LIGHT FX サービス概要/LION FX 取引ルール
水準が50%と100%ではどう違うか
ロスカット水準が50%の会社は、100%の会社よりロスカットまでの値幅が広くなります。前述の例では、100%なら4円、50%なら7円の値動きまでロスカットされません。
その反面、50%でロスカットされると、口座に残るお金は少なくなります。前述の例では、100%なら6万円、50%なら3万円が残る計算です。どちらが良いというより、「値幅の余裕」と「残るお金」のどちらを重視するかの違いと考えましょう。
ロスカットの前に届くアラートも確認しておく
多くのFX会社は、ロスカットの水準に近づくと、メールなどでアラート(注意喚起)を送ります。たとえば、DMM FXは証拠金維持率70%を下回るとアラートメールを送信し、みんなのFXとLIGHT FXは120%以下でロスカットアラートを通知します(2026年10月時点・公式サイトより)。
ただし、DMM FXが「ロスカットは事前の通知なく執行されます」と案内しているように、アラートが届く前にロスカットされることもあります。アラートは、あくまで補助として使いましょう。
ロスカットでも損失が限定されない場合がある
ロスカットは、いつも決まった損失で止まるわけではありません。公的機関やFX会社が示している注意点を確認しましょう。
ロスカットの判定と実際の決済のレートはずれることがある
金融先物取引業協会は「ロスカット取引について」で、ロスカットは「いかなる場合にも一定の損失額に限定されるものではありません」と説明しています。損失が決められた水準に達した時点から決済の手続きが始まるため、判定時と実際に決済されるときのレートが異なる場合があるからです。
前述の計算例の「146円」「143円」も、あくまで目安と考えておきましょう。
相場の急変や週明けには証拠金を上回る損失が出ることがある
為替レートの急激な変動やスプレッドの拡大があると、ロスカットが間に合わず、預けた証拠金以上の損失が出ることがあります。金融庁も、相場が急激に変動したときは、ロスカットルールが適用されても証拠金の額を上回る損失が生じることがあると説明しています。
楽天FXは「値動きが激しい場合や、週が変わる際などに、ロスカット水準を大きく割り込んで大きな損失が発生する場合があります」と案内しています(2026年10月時点・公式サイトより)。週末をはさんで、金曜日の終わりと月曜日の始まりのレートが大きく離れるケースなどが代表例です。
実際に、金融先物取引業協会は、2015年1月に起きたスイスフランの大幅な相場変動で、一部の法人顧客に証拠金を大きく上回る損失が生じたことを紹介しています(法人店頭FX取引に係る証拠金規制)。
証拠金を上回った分は支払う必要がある
ロスカットで決済しても証拠金を上回る損失が出た場合、足りない分(不足金)はFX会社に支払う必要があります。たとえば、みんなのFXは「速やかに当社へ弁済を行わなければなりません」、外為どっとコムは、不足金発生日の翌々営業日の午後3時までに入金が必要としています(2026年10月時点・公式サイトより)。
不足金が出るしくみと対処はFXで借金になる?でも解説しています。
出典:ロスカット取引について(金融先物取引業協会)/いわゆる外国為替証拠金取引について(金融庁)
ロスカットを避ける方法
ロスカットを完全に防ぐ方法はありませんが、ロスカットに近づきにくくする方法はあります。ここでは4つの方法を紹介します。
方法1:実質レバレッジを低くする
ロスカットを避ける方法の1つ目は「実質レバレッジを低くする」ことです。預けたお金に対して取引量を小さくすれば、必要証拠金が小さくなり、証拠金維持率は高くなります。取引量の決め方はFXの資金管理とリスク管理で解説しています。
前述の例(ロスカット水準100%の場合)では、10万円で1万通貨を買うと約4円でロスカットの水準に届きますが、30万円なら約24円まで耐えられる計算でした。実質レバレッジの計算方法はレバレッジとはで解説しています。
方法2:ロスカットより手前で自分で損切りする
ロスカットを避ける方法の2つ目は「ロスカットより手前で自分で損切りする」ことです。「何円逆に動いたら決済する」と決めて、決済の注文を先に入れておけば、ロスカットより小さな損失で取引を終えられる可能性が高まります。
損切りは、自分で損失の大きさを決められる点がロスカットとの違いです。ただし、相場が急に動いた場合は、決めた価格で決済できないこともあります。アプリで決済の注文を入れる手順は、DMM FXアプリでの注文のやり方で解説しています。
方法3:証拠金維持率とアラートをこまめに確認する
ロスカットを避ける方法の3つ目は「証拠金維持率とアラートをこまめに確認する」ことです。維持率が下がってきたら、取引の一部を決済したり、入金したりして余裕を戻せます。
ただし、入金はすぐに反映されるとは限りません。マネースクエアは、入金が銀行等の処理により間に合わずロスカットされる場合があると注意しています(2026年10月時点・公式サイトより)。入金は余裕のあるうちに行いましょう。
方法4:週末や大きな発表の前は取引量を抑える
ロスカットを避ける方法の4つ目は「週末や大きな発表の前は取引量を抑える」ことです。前述のとおり、週明けや相場の急変時には、レートが大きく飛んでロスカットが間に合わないことがあります。
週末をまたいで取引を持ち越すときや、経済指標・金融政策の発表をまたぐときは、取引量を減らしておくと急な値動きの影響を小さくできます。週明けにレートが離れて始まる仕組みと対策はFXの窓開けとはで解説しています。
FXのロスカット手数料がかかる会社
ロスカットされたときに手数料がかかるかどうかも、FX会社によって違います。
GMOクリック証券(FXネオ)はロスカット時に手数料がかかる
GMOクリック証券のFXネオは、自動ロスカットや追証による強制決済が執行されたときのみ、1万通貨あたり税込500円の手数料がかかります(2026年10月時点・公式サイトより)。ハンガリーフォリント/円・南アフリカランド/円・メキシコペソ/円は、10万通貨あたり税込500円です。
| ロスカットされた数量 | ロスカット手数料(米ドル/円などの場合) |
|---|---|
| 1,000通貨 | 税込50円 |
| 1万通貨 | 税込500円 |
| 1万1千通貨 | 税込550円 |
※2026年10月13日時点・GMOクリック証券公式サイト(取引ルール・FAQ)より。
GMOクリック証券のトップページは「すべての手数料が無料」としていますが、ロスカット・強制決済時には手数料が発生すると注記されています。取引ルールでも確認しておきましょう。FXネオのサービスの特徴はGMOクリック証券 FXネオの評判で整理しています。
ロスカット手数料が無料と明記している会社
一方、DMM FX、松井証券のFX、楽天FX、SBI FXTRADE、外為どっとコム、みんなのFX、LIGHT FXは、公式サイトでロスカット手数料を無料と案内しています(2026年10月時点)。手数料の有無は変わることがあるため、口座を開く前に各社の手数料ページを確認しましょう。各社の取引条件の違いはFXおすすめアプリ・口座の比較でもまとめています。
▶ 関連記事:FXおすすめアプリ・口座10社比較
【まとめ】FXのロスカットの仕組みを知って余裕のある取引をしよう
当記事では、ロスカットの仕組み、証拠金維持率の計算方法、FX会社ごとのロスカット水準、ロスカットでも損失が限定されない場合、ロスカットを避ける方法、ロスカット手数料をご紹介しました。ロスカットは損失の拡大を防ぐ仕組みですが、相場の急変では預けた証拠金を上回る損失が出る可能性もあります。
まずは少額・低い実質レバレッジで、自分で損切りのルールを決めてから取引してみましょう。少ない資金で始めたい方は少額から始められるFX口座も参考にしてみてください。
FX(外国為替証拠金取引)は元本が保証される商品ではありません。為替相場や金利の変動により損失が生じる可能性があり、レバレッジをかけた取引では預けた証拠金を上回る損失が発生する可能性があります。取引の際は各FX会社の契約締結前交付書面等をよくお読みいただき、ご自身の判断と責任で行ってください。本記事の情報は2026年10月13日時点のものです。
