最終更新:2026年10月17日
植田和男(うえだ・かずお)氏は、2023年4月9日に就任した第32代の日本銀行総裁です。2026年10月の挨拶・会見では、物価の動きなどに応じて利上げを続ける考えを示しています。当記事では、植田総裁の経歴と任期、就任後の金融政策の主な決定、主な発言に加え、会見の時刻と円相場との関係も解説します。
植田総裁の発言は、円相場のニュースでたびたび取り上げられます。人物の評価ではなく、日本銀行の公表資料と報道で確認できる事実をまとめました。
植田総裁とは?経歴と任期
ここでは、日本銀行の公式サイトのプロフィールをもとに、植田総裁の経歴と任期を整理します。
2023年4月に就任した日本銀行の総裁で、任期は2028年4月まで
日本銀行のプロフィールによると、植田総裁の任期は2023年4月9日から2028年4月8日までです。日本銀行の歴代総裁の一覧では第32代にあたり、前任は第31代の黒田東彦(くろだ・はるひこ)氏です。
日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会は、総裁、副総裁2人、審議委員6人の計9人で構成されています。総裁も委員の1人として、金融政策決定会合(日銀会合)で政策金利などの決定に加わります。会合のあとには定例の記者会見を開き、決定の理由を説明します。
出典:日本銀行「総裁:植田和男」、日本銀行「歴代総裁」、日本銀行「政策委員会」
経済学者で、日本銀行の審議委員を務めた経験もある
植田総裁は1951年生まれ、静岡県出身です。大学で経済学を教えてきた研究者で、1998年から2005年まで日本銀行の政策委員会審議委員を務めた経験があります。日本銀行の公式プロフィールの経歴は次のとおりです。
| 時期 | 経歴 |
|---|---|
| 1974年3月 | 東京大学理学部を卒業 |
| 1980年5月 | マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学部大学院を卒業(同年9月にPh.D.取得) |
| 1980年7月 | ブリティッシュ・コロンビア大学経済学部 助教授 |
| 1982年4月 | 大阪大学経済学部 助教授 |
| 1989年4月 | 東京大学経済学部 助教授 |
| 1993年3月 | 東京大学経済学部 教授 |
| 1998年4月 | 日本銀行政策委員会 審議委員(2000年4月に再任、2005年4月に退任) |
| 2005年4月 | 東京大学大学院経済学研究科 教授 |
| 2017年4月 | 共立女子大学 教授 |
| 2023年4月9日 | 日本銀行 総裁 |
※日本銀行「総裁:植田和男」より(和暦を西暦に置き換えて掲載)
審議委員とは、総裁・副総裁とともに政策委員会を構成し、金融政策の決定に投票するメンバーです。植田総裁は、審議委員として金融政策の決定に加わった経験を持って総裁に就任しました。
就任後の金融政策の主な決定(マイナス金利解除から1.25%程度まで)
ここでは、植田総裁の就任後に政策金利が変わった会合を、日本銀行の公表文をもとに整理します。政策金利が据え置かれた会合を含む一覧は日銀会合(金融政策決定会合)とはにまとめています。
2024年3月にマイナス金利を解除し、政策金利は1.25%程度まで上がった
植田総裁のもとで日本銀行は、2024年3月にマイナス金利政策を終え、2026年9月までに6回の引き上げで政策金利を1.25%程度にしました(2026年10月17日時点)。政策金利とは、日本銀行が誘導目標とする短期の金利で、現在は無担保コールレート(オーバーナイト物)という、金融機関どうしが翌日まで資金を貸し借りするときの金利です。
| 決定日 | 政策金利(誘導目標) | 決定内容 | 賛否 | 適用日 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年9月18日 | 1.25%程度 | 1.0%程度から引き上げ | 賛成7・反対2 | 9月24日 |
| 2026年6月16日 | 1.0%程度 | 0.75%程度から引き上げ | 賛成7・反対1(植田総裁は欠席) | 6月17日 |
| 2025年12月19日 | 0.75%程度 | 0.5%程度から引き上げ | 全員一致 | 12月22日 |
| 2025年1月24日 | 0.5%程度 | 0.25%程度から引き上げ | 賛成8・反対1 | 1月27日 |
| 2024年7月31日 | 0.25%程度 | 0〜0.1%程度から引き上げ | 賛成7・反対2 | 8月1日 |
| 2024年3月19日 | 0〜0.1%程度 | マイナス金利政策を終了 | 賛成7・反対2 | 3月21日 |
※2026年10月17日時点・日本銀行の各会合の公表文より。賛否は金融市場調節方針(政策金利)についての票数です。
出典:日本銀行(2026年9月18日)、同(2026年6月16日)、同(2025年12月19日)、同(2025年1月24日)、同(2024年7月31日)、同(2024年3月19日)
2024年3月はマイナス金利政策と長短金利操作を終えた
2024年3月19日の会合で日本銀行は、賃金と物価の好循環を確認し、2%の物価目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断しました。そのうえで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みとマイナス金利政策は、その役割を果たしたとしています。
それまでは、金融機関が日本銀行に預けるお金の一部に−0.1%の金利を付けるマイナス金利政策と、長期金利も一定の水準に抑える長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)がとられていました。この会合で、短期金利を0〜0.1%程度で推移するよう促す方針に変わり、以後は短期金利の操作を主な政策手段とすることになりました。
出典:日本銀行「金融政策の枠組みの見直しについて」(2024年3月19日)、日本銀行「(参考)金融政策の枠組みの見直し」
2026年は6月と9月に引き上げ、9月は反対が2人だった
2026年は、6月16日に1.0%程度、9月18日に1.25%程度へ引き上げました。9月の会合では、9人のうち2人(浅田委員・佐藤委員)が据え置きを主張して反対しています。
9月18日の会見で植田総裁は、2人の反対の理由を次のように紹介しています。
「浅田委員は、足元の生鮮食品を除く消費者物価の上昇率が2%を下回る中、経済の状況も必ずしも強いとはいえない点を踏まえると、金融市場調節方針を据え置くことが望ましいとして、また、佐藤委員は、経済・物価情勢が、現時点ではこれまでと比べて、大きく加速している状態にあるわけではないと考えられるもとで、このタイミングでの利上げは適切でないとして反対されました。」
なお、6月の会合は植田総裁が欠席し、総裁を除く8人で決定しました。会合後の会見は内田副総裁が総裁の代理として行っています。
出典:日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)、日本銀行「総裁記者会見」(2026年9月18日)、日本銀行(2026年6月16日)
日本と米国の政策金利の違いは政策金利とはでまとめています。
植田総裁の主な発言
日本銀行が公表している挨拶・会見記録と報道から、最近の主な発言を原文で紹介します。
10月6日の挨拶では、政策金利の引き上げを続ける考えを示した
植田総裁は2026年10月6日、全国証券大会での挨拶で、経済・物価・金融情勢に応じて政策金利の引き上げを続けていく考えを示しました。物価については次のように述べています。
「中長期の予想物価上昇率は引き続き上昇しており、消費者物価の基調的な上昇率は2%に近づいています。」
基調的な上昇率とは、一時的な変動要因を除いた、物価の流れのことです。今後の金融政策については、次のように話しています。
「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。」
「基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が、これまでよりも重要になってきていると考えています。」
また、見通しのリスク要因のうち、中東情勢、AI関連需要の拡大、為替相場の変動が経済・物価に及ぼす影響には引き続き留意が必要だとしています。そのうえで、基調的な物価上昇率が2%の目標を超えて上振れていくリスクがあると述べました。
出典:日本銀行「令和8年全国証券大会における挨拶」(2026年10月6日)
日本銀行の金融政策は為替を一定の範囲に収めるためのものではないと説明している
9月18日の会見で、利上げのあとに円安が進んだことを問われた植田総裁は、金融政策は為替をコントロールするためのものではないと説明しました。
「私どもの金融政策は、為替変動のわが国の物価に与える影響を考慮したうえで金利政策をどうするかというふうには動きますけれども、為替をコントロールする、為替をある領域、範囲に安定化させようとかそういう政策として行っているものではないということを改めて申し上げておきます。」
同じ会見では、これまでの円安の進行が、輸入品などの値上がりを企業が取引先への販売価格に上乗せする「価格転嫁」を通じて、消費者が買うさまざまな品目の値上がりにつながる可能性にも触れています。為替は、物価への影響を通じて金融政策の判断材料になるという考え方です。
なお、為替介入は財務大臣の権限で行われ、日本銀行は財務大臣の代理人として実務を担っています(日本銀行「為替介入(外国為替市場介入)とは何ですか?」)。詳しくは為替介入とはで解説しています。
10月16日のバンコクの会見では、基調的な物価上昇率がこれ以上上がることは「容認できない」と述べたと報じられた
報道によると、植田総裁は10月16日、タイのバンコクでG20(20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議など一連の会議を終えたあとに記者会見し、基調的な物価上昇率が2%にかなり接近しているとの認識を改めて示しました。
同じ報道は、植田総裁の発言として次の言葉を伝えています。
「(目標の)2%にかなり接近している」
「これ以上、上がることは容認できない」
「2%程度で安定させていく観点がこれまでよりも重要になってくる」
報道によると、植田総裁は利上げを続ける考えを示し、今後の利上げのタイミングやペースは、中東情勢やAI関連需要、為替相場の動向を踏まえて検討していく方針を示しました。報道の内容から見ると、10月6日の挨拶と同じ考え方を海外の会見でも示した形です。
出典:時事ドットコム「植田日銀総裁、物価上振れ「容認できず」 2%目標に接近、利上げ継続」(2026年10月16日)
この会見の記録は日本銀行の会見ページに掲載がないため(2026年10月17日時点)、報道の内容として紹介しています。
総裁会見の時刻と次回の日銀会合の日程
植田総裁の定例記者会見は、日銀会合の2日目に開かれます。時刻の目安と、次回の会合の日程を整理します。
定例会見は会合2日目の午後3時30分からが目安
日本銀行の会見記録によると、2025年12月から2026年9月までの定例会見(2026年6月は内田副総裁が代理)は、いずれも会合2日目の午後3時30分から始まっています。所要時間は約60〜75分でした。開始時刻は決まっているものではないため、目安として考えましょう。
会合の結果(公表文)は、会見より前の、会合が終わった直後に公表されます。公表時刻は決まっていません。結果が出たあと、その理由や今後の考え方を午後の会見で総裁が説明するという流れです。会見記録は原則として翌営業日に日本銀行のホームページに掲載されます。
出典:日本銀行「金融政策決定会合の運営」、日本銀行「金融政策決定会合とは何ですか? いつ開催されるのですか?」(教えて!にちぎん)、日本銀行「総裁記者会見」(2026年9月18日)
会合ごとの会見記録は、日本銀行「植田総裁の記者会見」の一覧から確認できます。
次回の日銀会合は10月29日・30日で、展望レポートも公表される
次回の日銀会合は10月29日(木)・30日(金)です。2日目の10月30日には、総裁の定例会見に加えて、日本銀行が経済・物価の見通しを示す「展望レポート」の基本的見解も公表されます。
| 会合の日程 | 総裁の定例会見 | 展望レポート(基本的見解) |
|---|---|---|
| 2026年10月29日(木)・30日(金) | 10月30日(金) | 10月30日(金) |
| 2026年12月17日(木)・18日(金) | 12月18日(金) | ― |
| 2027年1月21日(木)・22日(金) | 1月22日(金) | 1月22日(金) |
※2026年10月17日時点・日本銀行「金融政策決定会合等の日程」より
同じ週には、米国のFOMC(連邦公開市場委員会)も10月27日・28日に開かれます。声明の公表は日本時間10月29日(木)の午前3時ごろが目安で、日米の金融政策の結果が2日続けて出る週になります。
出典:FRB「Meeting calendars and information」
展望レポートの見方は展望レポートとは、FOMCの日程と結果はFOMCとはで解説しています。
日銀総裁の発言が円相場で注目される理由
ここでは、注目される理由を一般論として解説します。相場の動きを予想するものではありません。
日本の金利の見通しを考える材料になる
金融先物取引業協会は、為替相場を動かす要因の1つとして金利を挙げ、金利が上がった通貨に買いが集まり、通貨の価値が上昇することが考えられると説明しています。植田総裁は政策金利を決める政策委員会のメンバーで、会合の決定を会見で説明する立場にあります。そのため、その発言は日本の金利の先行きを考える材料として注目されます。ただし、後述のとおり、実際の円相場は金利以外の要因でも動きます。
出典:金融先物取引業協会「学ぼう!FX #3 為替相場を動かす要因」
ドル円は日米の金利差もあわせて見られている
ドル円は米ドルと日本円の交換なので、日本の金利と米国の金利の差も見られています。2026年10月17日時点で、日本銀行の政策金利は1.25%程度、米国のFF金利(米国の政策金利)の誘導目標は3.75〜4.00%です。
日本銀行の外国為替市況によると、2026年10月16日(金)17時時点のドル円は158.00〜158.02円でした。
出典:日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)、FRB 声明(2026年9月16日)、日本銀行「外国為替市況」(2026年10月16日)
金利差とスワップポイントの関係はスワップポイントとは、円安が続いてきた背景は円安の理由で解説しています。
発言だけで円相場の方向は決まらない
前述の9月の会見では、利上げの決定後に円安方向に動いたことについて記者が質問する場面もありました。利上げが決まっても、円高になるとは限らないということです。
また、為替は金利以外にも、米国の金融政策や経済指標、政治、市場心理など多くの要因で動きます。総裁の発言があっても、円相場がどちらに動くかは決まっていません。
会見や日銀会合の前後にFXで注意したいこと
会合の結果や総裁の会見が出る前後は、相場が急に動くことがあります(日銀会合の前後の注意点は日銀会合(金融政策決定会合)とはでも詳しく解説しています)。金融先物取引業協会は、重要な発表の直後などでレートが急変するとスプレッドが広がりやすくなること、ロスカットが十分に機能せず、預けた証拠金以上の損失が出る場合があることを注意点として挙げています。
| タイミング | 注意したいこと |
|---|---|
| 結果の公表(会合終了後直ちに・時刻は未定) | 公表時刻が決まっていないため、会合2日目の日中は急な値動きに備えておく |
| 総裁会見(午後3時30分ごろから約1時間) | 会見中の発言でも値動きが出ることがあるため、新しい注文を急がない |
ポジション(保有中の取引)がある場合は、レバレッジを低めにし、損切りの逆指値注文(決めた値段まで不利に動いたら決済する注文)を入れておくことが基本です。ただし、急変時は指定した値段より不利なレートで取引が成立(約定)することもあります。
出典:金融先物取引業協会「学ぼう!FX #2 為替相場とは」、金融先物取引業協会「FX取引に係る主なリスク」
スプレッドの仕組みはスプレッドとは、ロスカットの仕組みはロスカットとは、損切りの設定は損切りのやり方もあわせて確認してみてください。
【まとめ】植田総裁の発言と次回の日銀会合を確認しよう
当記事では、植田総裁の経歴と任期、就任後の金融政策、主な発言、会見の時刻、円相場との関係をご紹介しました。
- 2023年4月9日に就任した第32代の日本銀行総裁で、任期は2028年4月8日まで
- 2024年3月にマイナス金利政策を終え、2026年9月に政策金利を1.25%程度へ引き上げ
- 10月の挨拶・会見では、基調的な物価上昇率が2%に近づくなかで利上げを続ける考えを示した
- 次回の日銀会合は10月29日・30日で、総裁の定例会見は30日の午後3時30分ごろからが目安
総裁の発言の意味が分かると、円相場のニュースも理解しやすくなります。FXをこれから始める方はFXの始め方から確認し、アプリ選びに迷ったらFXおすすめアプリ・口座10社比較も参考にしてみてください。
FX(外国為替証拠金取引)は元本が保証される商品ではありません。為替相場や金利の変動により損失が生じる可能性があり、レバレッジをかけた取引では預けた証拠金を上回る損失が発生する可能性があります。取引の際は各FX会社の契約締結前交付書面等をよくお読みいただき、ご自身の判断と責任で行ってください。本記事の情報は2026年10月17日時点のものです。

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