FXの両建てとは、同じ通貨ペアで買いポジションと売りポジションを同時に持つことです。当記事では、仕組み・コスト・ロスカットが起こる理由に加え、主なFX会社の扱いと勧誘の禁止を整理します。
両建ては「損失を止めておける方法」に見えますが、金融庁は経済合理性を欠くおそれがある取引と説明しています。始める前にコストとリスクを知っておきましょう。
FXの両建てとは?買いと売りを同時に持つ取引
両建ては同じ通貨ペアで売りと買いを同時に保有すること
金融庁は、両建て取引を「売建玉と買建玉を同時に保有する」取引と説明しています。たとえば米ドル/円を1万通貨買ったまま、同じ米ドル/円を1万通貨売る注文を新規で出すと、両建ての状態になります。
同じ数量の両建てでは為替が動いても損益の合計がほぼ動かない
同じ数量で両建てすると、為替レートが上がれば買いの利益と売りの損失が、下がれば買いの損失と売りの利益が、ほぼ同じ額で増えていきます。そのため、損益の合計はほとんど動かなくなります。
仮の前提で計算してみましょう(当サイトによる計算例)。150円で1万通貨を買い、148円に下がった時点で1万通貨を売って両建てにしたとします。このときの買いの評価損は(148円−150円)×1万通貨=−2万円です。
その後に146円まで下がると、買いの評価損は−4万円に増えますが、148円の売りに2万円の評価益が出るので、合計は−2万円のままです。含み損が消えるわけではなく、−2万円の状態で止まっているだけという点を押さえておきましょう(スプレッドとスワップポイントは計算に含めていません)。実際には、スプレッドが広がると両建てのままでも評価損が増えることがあります(後述)。
FXの両建てでかかる3つのコスト
損益の合計が動かなくても、両建てにはコストがかかります。金融庁は「取引コストを二重に負担することやスワップポイントが相殺されることなど、経済合理性を欠くおそれがある」と説明しています。主なコストは次の3つです。
コスト1:スプレッドを二重に負担する
両建てのコストの1つ目は「スプレッドを二重に負担する」ことです。買いポジションをそのまま決済すれば、スプレッドの負担は買いの1回分で済みます。両建てにすると、新しく持った売りポジションにもスプレッドがかかります。
米ドル/円のスプレッドが0.2銭なら、1万通貨で1回あたり0.002円×1万通貨=20円です。両建てを経由して2つのポジションを決済すると、売りの分の20円が上乗せされる計算です(当サイトによる仮の前提での計算)。スプレッドの考え方はFXのスプレッドとはで解説しています。
コスト2:スワップポイントの差を支払う
両建てのコストの2つ目は「スワップポイントの差を支払う」ことです。スワップポイントは、受け取る側より支払う側の金額が大きく設定されていることがあります。同じ数量で両建てすると、その差額を支払う状態になる可能性があります。
たとえばDMM FXの米ドル/円は、受取日2026年10月13日の1Lot(1万通貨)あたりのスワップポイントが、買い120円・売り−123円でした(スワップカレンダーより)。同じ数量で両建てしていれば、差し引き−3円です。両建て中は、付与日ごとにこうした差額がかかります。差額は日によって変わり、土日分などをまとめて付与する日は大きくなります(同じ米ドル/円の2026年10月15日受取分は3日分で、買い363円・売り−372円の差し引き−9円)。
ヒロセ通商も、同じLot数で両建てしたときのスワップポイントについて「相殺はされません。」とし、通常はマイナスの金額がプラスより大きいため損失が発生すると案内しています(2026年10月14日時点・公式FAQより)。仕組みはスワップポイントとはで確認できます。
コスト3:会社によっては証拠金が両方にかかる
両建てのコストの3つ目は「会社によっては証拠金が両方にかかる」ことです。DMM FXは、両建てについて「当社では買いと売りそれぞれの建玉に証拠金が必要となる」と案内しています。
1ドル150円・レバレッジ25倍(証拠金率4%)のとき、1万通貨の必要証拠金は150円×1万通貨×4%=6万円です。買いと売りの両方に証拠金がかかる場合は合計12万円、多い方だけにかかる方式(MAX方式)なら6万円になります(当サイトによる仮の前提での計算。実際の金額は各社の計算方法・端数処理で変わります)。
証拠金が多く拘束されると、その分だけ証拠金維持率が下がりやすくなります。必要証拠金の計算はFXの証拠金とはで解説しています。
両建てでもロスカットや追証が起こる理由
スプレッドが広がると両建てでもロスカットされることがある
金融先物取引業協会は、「両建てをしていれば相場が急変しても損益が相殺されロスカットが実行されることはない」とは限らないと説明しています。FX会社は通常、買い建玉はビッドレート、売り建玉はオファーレートで評価損益を計算するためです。
そのため、相場の急変や早朝などでスプレッドが急に広がると、両建てのままでも評価損が増えます。協会は「スプレッドが突然拡大してしまうと、ロスカットが実行される可能性がある」と注意を促しています。ロスカットの仕組みはFXのロスカットとはで確認しておきましょう。
出典:学ぼう!FX ロスカット取引について(金融先物取引業協会)
追証の解消は「両建てを外す」だけでは足りない場合がある
両建ての一部を決済しても、追証(追加証拠金)を解消できるとは限りません。松井証券は、「同一通貨を両建している場合は、数量が少ない方のポジションを決済しても追加証拠金の解消にはなりません。」と明記しています(2026年10月14日時点・取引ルールより)。
さらに、多い方のポジションを決済する場合も、解消になるのは「反対ポジションの数量との差額分に限られます」としています。GMOクリック証券も、両建て時に追証の解消に数える決済通貨数量は、追証発生時と決済後のそれぞれで「数量の多い建玉」を比べた差になると注記しています。追証の基本はFXの追証とはで解説しています。
主なFX会社の両建ての扱い(2026年10月時点)
両建ての可否・初期設定・必要証拠金の計算方法は、FX会社によって違います。各社の公式サイトの表記は次のとおりです。
| FX会社(サービス) | 両建ての表記 | 両建て時の必要証拠金 | 公式の主な説明 |
|---|---|---|---|
| DMM FX | 可能 | 買いと売りそれぞれに必要 | 経済合理性を欠くため推奨しない |
| 松井証券(FX) | —(両建て時の計算方法を記載) | 売買区分別に計算し大きい方 | デメリットがあり、当社からお勧めするものではない |
| GMOクリック証券(FXネオ) | —(取引ルールに「両建取引」の項目あり) | MAX方式(数量の多い方のみ) | 経済合理性を欠く取引で推奨するものではない |
| みんなのFX | 可能 | 売建玉・買建玉の合計のうち高い方 | 経済合理性を欠くため推奨しない |
| LIGHT FX | 可能 | 売・買ポジションの合計のうち高い方 | 経済合理性を欠くため推奨しない |
| 楽天FX | 可(ASストリーミング注文では不可) | MAX方式(大きい方) | 経済合理性を欠く取引でお勧めしない |
| SBI FXトレード | 可能 | 取引金額の多いポジションのみ | デメリットがあり経済合理性を欠くおそれ(留意を促す) |
| 外為どっとコム(外貨ネクストネオ) | 可能(初期状態は不可・設定で変更) | MAX方式 | スプレッドの二重負担・スワップの逆ザヤの可能性 |
| ヒロセ通商(LION FX) | 可能(初期設定は「両建なし」) | 売り・買いの数量の多い方 | 推奨していない |
※2026年10月14日時点・各社公式サイト(サービス概要・取引ルール・取引説明書・FAQ等)より。「—」は当サイトが公式サイトで記載を確認できなかった項目です。表現は一部要約しています。MAX方式は、売りと買いのうち大きい方だけで必要証拠金を計算する方式です。
推奨の可否を書いている会社はいずれも両建てを勧めていない
表のうち推奨の可否を明記している会社は、いずれも両建てを推奨しない・勧めないと案内しています。SBI FXトレードも、推奨の可否は書いていないものの、経済合理性を欠くおそれがあるとして留意を促しています。各社が挙げる主な理由は、前述のスプレッドの二重負担とスワップポイントの差です。
GMOクリック証券は、これらに加えて「決済の仕方によっては取引コストが二重にかかる場合がある」ことも理由に挙げています。各社の特徴はFXおすすめアプリ・口座の比較でまとめています。
両建てには設定の切り替えが必要な会社もある
ヒロセ通商(LION FX)は、両建てを推奨していないため初期設定を「両建なし」にしており、両建てする場合は自分で「両建あり」に変更するよう案内しています。外為どっとコムも初期状態では両建てができず、設定はリッチアプリ版とスマートフォンアプリ版など取引ツールごとに必要で、ワンクリック設定のときは一律で両建てができないとしています。
楽天FXはASストリーミング注文では両建てができず、松井証券はスピード注文でFIFO(後述)を使うかどうかを「両建て設定」で選ぶ形です。設定は会社・ツールごとに違うため、口座のマニュアルで確認しましょう(ヒロセ通商の評判・外為どっとコムの評判)。
FX会社による両建ての勧誘は禁止されている
金商業等府令で「対当する取引」の勧誘が禁止されている
金融庁は、両建て取引が経済合理性を欠くおそれがあることから、「金融商品取引業者が両建てを勧誘することは禁止されています。」と説明しています。
根拠は「金融商品取引業等に関する内閣府令」第117条第1項第26号(金融商品取引法第38条の禁止行為の1つ)です。証拠金を預ける店頭デリバティブ取引について、顧客の売付け・買付けと「対当する取引(これらの取引から生じ得る損失を減少させる取引をいう。)の勧誘その他これに類似する行為」を禁じています。
対象は特定投資家(プロの投資家として扱われる顧客)を除く顧客です。店頭FXは条文上の「店頭金融先物取引」にあたるため、個人だけでなく法人の顧客も含まれます。
金融庁の監督指針(令和8年10月版)は、顧客から両建てしたいと申し出があったときや、両建てできるかを聞かれたときに「できる」と告げることは、直ちにこの禁止にあたらないとしています。ただし、手数料やスプレッドの二重負担、スワップポイントによる逆ざやのおそれなどのデメリットに触れずに「できる」と表示することは、「その他これに類似する行為」にあたるとしています。
出典:いわゆる外国為替証拠金取引について(金融庁)/金融商品取引業等に関する内閣府令(e-Gov法令検索)/金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針 IV-3-3-2(金融庁)
禁止されているのは業者による勧誘で、自分で両建てすることではない
この規定が禁じているのは、FX会社(その役員・社員を含む)の側が両建てを勧めることです。顧客が自分の判断で両建てすること自体を禁じる規定ではなく、前の章の表のとおり両建てを「可能」としている会社もあります。
一方で、FX会社の担当者などから「含み損が出たら両建てで損失を止めましょう」のように勧められた場合は、この禁止にあたる可能性があります。金融先物取引業協会は、会員から両建ての勧誘を受けたときは証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC・0120-64-5005・平日9時〜17時)へ連絡するよう案内しています。金融庁の金融サービス利用者相談室(平日10時〜17時・0570-016811)にも相談できます。
意図せず両建てにならないための注意点
ポジションを閉じるときは決済注文を使う
両建てが可能な設定のまま新規の反対注文を出すと、決済にならず両建てになります。反対に、ヒロセ通商・外為どっとコム・SBI FXトレード(2WAY注文)は、両建てなしの設定で反対方向の注文を出すと、新規のつもりでも保有ポジションの決済として扱われると案内しています(SBIは保有数量を超える分を新規とするなど、例外の条件も各社が記載)。楽天FXも、ASストリーミング注文では反対の注文が自動的に決済注文になるとしています。設定や注文方法によって結果が変わるため、ポジションを閉じるときは、ポジション一覧からの決済注文を使うのが基本です。
松井証券やDMM FXには、反対ポジションがあれば古い順に決済されるFIFO(先入先出)の注文もあります。ただし松井証券のFIFO設定は「スピード注文でのみ有効」で、自動売買の建玉は含まれないとされています。決済の操作はDMM FXアプリでの注文のやり方でも解説しています。
別の通貨ペアとして扱われる商品に注意する
同じ通貨の組み合わせでも、会社が別の通貨ペアとして扱う商品があります。ヒロセ通商は通常銘柄と大口銘柄を別の通貨ペアとしており、通常銘柄の反対売買は大口銘柄の決済にならず「実質的な両建」になると説明しています。この場合も必要証拠金は不要にならないと注記しています(取引説明書より)。
みんなのFXも、USDJPY LIGHTなどのLIGHTペアと通常の通貨ペアは別々の通貨ペアで、両建設定の対象外としています。自分の持っているポジションと同じ商品で決済しているか、注文前に確認しましょう。みんなのFXの特徴はみんなのFXの評判で紹介しています。
自動売買では売りと買いを同時に持つ局面がある
マネースクエアは、トラリピの「Buy&Sell」戦略について、一部の価格帯で売り買い両方のポジションを保有する局面があり、スワップの差やスプレッドを負担するデメリットがあると注記しています。自動売買でも設定前に確認しましょう。国内の自動売買サービスの違いは国内のFX自動売買の比較で整理しています。
FXの両建てについてのよくある質問
両建ては違法ですか?
法令で禁止されているのは、FX会社が顧客に両建てを勧誘することです(金商業等府令第117条第1項第26号)。顧客が自分の判断で両建てすること自体を禁じる規定ではありません(詳しくは前述)。
両建てがダメ・意味ないと言われる理由は何ですか?
金融庁が「経済合理性を欠くおそれがある」と説明しているためです。損益の合計が止まっていても前述の3つのコストはかかり続け、スプレッドが広がればロスカットされることもあります。
両建てで含み損は解消できますか?損切りとどちらがよいですか?
両建てで含み損はなくならず、両建てにした時点の金額でほぼ止まるだけです。外為オンラインも「両建は必ずしも含み損の増大を回避できる手段ではありません。」と注意しています。両建てを外すにはどちらかを決済する必要があり、その後は残ったポジションの値動きで損益が変わります。損切りとどちらを選ぶかはご自身の判断です。損失の限度を決めておく方法はFXの損切りのやり方で解説しています。
両建ては負けない方法(必勝法)になりますか?
両建て自体に、損失を出さなくする仕組みはありません。冒頭の例で、146円で売りだけを決済すると2万円の利益が確定しますが、買いには−4万円の評価損が残ります。どちらを先に外せばよいかは事前には分からず、両建てを含めて、どの手法も将来の利益を約束するものではありません。
【まとめ】FXの両建てのコストとリスクを確認しよう
当記事では、FXの両建ての仕組みとコスト、各社の扱い、勧誘の禁止などをご紹介しました。両建ては含み損を止めているように見えますが、損失はなくならず、コストがかかり続ける取引です。
まずは、使っている口座の両建ての設定と必要証拠金の計算方法を確認してみましょう。口座ごとの違いを比べたい方は、スワップポイントの比較も参考にしてみてください。
FX(外国為替証拠金取引)は元本が保証される商品ではありません。為替相場や金利の変動により損失が生じる可能性があり、レバレッジをかけた取引では預けた証拠金を上回る損失が発生する可能性があります。取引の際は各FX会社の契約締結前交付書面等をよくお読みいただき、ご自身の判断と責任で行ってください。本記事の情報は2026年10月14日時点のものです。
